「噛むこと」の大切さを教えてくれる面白い実験結果があります。
老齢期のマウスの奥歯を削り取り、学習・記憶力を測定したところ、健全な歯をもつ老齢マウスに比べて、記憶力が1/5ほどに低下したといいます。さらに、削り取った歯を治療して「よく噛める」ようにしたところ、学習・記憶力が日ごとに回復していったといいます。
また、人を対象にした疫学調査でも「歯の喪失と認知機能の関連」についてのデータが得られています。
私たちは日常生活の中で、歩くことや呼吸をすることと同様に、無意識のうちに「咀嚼」を行っています。
この咀嚼によって、強い感覚入力が脳の広い範囲に及びます。つまりよく噛むことで、脳のリハビリテーション効果、寝たきり予防効果があるといいます。
また、記憶や情動に関わる領域にも及び、幼稚園児や小学生では、十分な咀嚼と知能指数との間に相関が認められています。「歯ごたえのある食物を食事に取り入れてよく噛むこと」は脳の活性化に極めて重要であるといえます。
よく噛むことは脳の活性化につながるだけではなく、右図のような効用があります。
また、よく噛むことによって分泌される唾液の効果には以下のようなものが挙げられます。
・・・・・など
十分な唾液の分泌は私たちの体にとって大変重要な働きをしているのです。そのためには、歯ごたえのある食べ物を1口で30秒、または30回以上よく噛む必要があります。
最近では、これほど重要な「咀嚼」が、ともすれば疎かにされているような気がします。